●「暴力/セックス描写」への偏見に直面して― |
―LAURENCEさんは、子供の頃、一番最初にどのようにマンガやアニメと出会ったのですか?またその頃、フランスで日本のマンガやアニメは、どの程度受けいれられていたのでしょうか? |
私が子供の頃には、中高生向けの面白いマンガやアニメが非常に少なかったんです。本当に幼児向けの絵本のような作品しかなかった。そこに、ちょうど1978年、アニメ『グレンダイザー』の放映が始まりました。ロボットによるアクション、そしてヒーローがみんなを助けるという情熱的なストーリー、そして音楽もすばらしい作品が出てきたことは、当時の子供たちに大きな衝撃を与えました。その現象は、自分にとってもまさにアニメの原初体験として印象に残っています。
その直後から、『キャンディキャンディ』や『キャプテンハーロック』『ガッチャマン』などの作品が放映されて、日本アニメの人気が高まってきました。しかし、88年に『北斗の拳』が放送された際、作品が大変暴力的だということで、暴力シーンが全部カットされた上で放映され、しかもすぐ放送禁止になってしまったんです。それをきっかけに「日本のアニメ=暴力」という悪いイメージが、社会に広がってしまいました。「日本人はフランスの子供を悪くするためにこうしたアニメを作っている」という主張まで現れ、『星矢』や『ドラゴンボール』などでも、血の見えるシーンは放映時に全てカットされていました。 |
―暴力やセックス描写の問題は、フランスに限らずさまざまな地域で起きていますが、どうしたらよいとお考えですか? |
フランスの場合、テレビアニメの放映時間が、子供向けとそうでないものとで区別されていなかったことが、良くなかったのではないでしょうか。やはり『北斗の拳』を小さい子供に観せるのは問題があると思います。幼い子供には、やはり『どれみ』などを観せてあげる方がいいですし。逆にもっと年令が上なら『北斗の拳』も『ドラゴンボール』もありでしょう。
フランスでは元々「アニメは子供のもの」という考え方が前提にあったので、当然暴力もセックスもあってはいけない。「日本のアニメには、大人向けの作品もある」といった認識がなかったんです。今後は、世間のこうした意識を、もっと変えていく必要があると思います。大人向けの作品があることを広く認識してもらえれば、多少の暴力やセックスの描写もあり得ると、考えてもらえるはずです。
しかし、私の両親くらいの年齢は日本のアニメに嫌悪感を感じる世代ですが、今の子供の親、30代くらい…、の世代では、マンガやアニメに関して、親子間での意識のずれはなくなりつつあるのではないでしょうか。 |
●日本のファンと「情熱」を分かち合いたい― |
―さて(笑)、LAURENCEさんは、『コミックマーケット』にいらしたことはありますか? |
コミケットは、フランスでもとても良く知られています。コスプレや同人誌の話題にはコミケットからの情報が欠かせません。プロ作家さんのオリジナル本も入手できるいい機会ですし。でも、私自身は仕事が忙しくて、まだ行ったことがないんですよ(苦笑)。 |
―最後に、コミケット参加者のみなさんにメッセージをお願いします。 |
日本のマンガやアニメには、言葉が分からなくても、絵を見るだけで伝わってくる何かがあります。マンガやアニメというのは、国境を超えて同じ情熱を分かち合い、交換しあえるものだと思います。外国人だからと怖がらないで(笑)、ぜひフランスのおたく仲間にも優しく接してあげてください。これからも一緒に、情熱を分かち合って行きたいです。
私たちは日本のマンガを読むことによって、日本についてのさまざまな事象や、日本の文化を知ることができます。日本の人たちが、海外のファンを手を広げて受け入れ、歓迎してくれるのなら、私たちはとても嬉しいです。そこから、新たな関係を一緒に築いていきたいと思います。 |